コンビニにおいて人生を考察す

2020.03.08.Sun

にこやかにいらっしゃいませ、といい、丁寧にお辞儀をする。それだけではなくて、商品を出したり、掃除をしたり、たくさんの仕事を全て果たさねばならない。更にはハプニングにも対処せねばならないし、経験のないお客様のご要望にもお応えする必要がある。様々な人がいる。失敗を寛容に受け止めてくれる方、不機嫌そうな方、表情の読めない方、声が小さい方、世間話をしてくれる方、耳の聞こえない方、常連さん、それこそわたくしの親しい方など。その全ての方に丁寧に応対し、業務をこなしていく。わたくしの憧れる人物像を描いて、私自身をそれに当てはめる。

 

様々な経験をすると、相手の立場が容易に理解できるようになる。今日は雨が降っていた。お客様の中には、出入口のマットで靴の底を拭いてから入ってきてくださる方がいる。雨の日は泥で掃除がたいへんなのだ。その事を経験上知っている方、あるいはそうでなくとも周囲や働く者に気を配れる方はそのようにして入店して下さる。実にありがたい。わたくしも見習い、他のお店での振る舞い方に気を配り、あるいは店員さんの立ち振る舞いを見て学び、活かしていくようにしたいと思うのだ。

 

新人として働く上で分からないことがまだまだたくさんある。あるいは自分で考えてやっていることが間違っている、と教えられることがある。それを知ってがっかりもするが、それはしょうがない事だ、と割り切るしかない。わたくしが間違えたことは今度、自分が教える立場になった時に新人に教えたり、自分の笑い話にできればいいと思う。失敗を悔やむばかりではいけないのだ。今の気持ちを覚えておく。ときに謙虚に、ときに貪欲に。いつか新人を教える立場になった時に、新人である今この時の気持ちを思い出して指導に当たりたい。いまは、しんどくて、心に重みがずん、とかかる毎日かもしれない。だが、未来のための貯蓄を集める時期だと考えるのはどうだろうか。そう考えれば、この時を乗り越えられるのではないか。

神は乗り越えられる試練しか与えないのだ。𖠚ᐝ

結婚式場にて幸せに埋まる

2020.03.07.Wed

結婚式とは、幸せなひとときである。

何事においてもそうであるが、実感できるのはその場に居合わせて、自らの目で見、人々のざわめきが自らの身体を震わせる、臨場感があって初めて「幸せ」という実態が目の前に現れ、小さな心臓が真っ赤な血潮を身体中に勢いよく押し出そうとする。「結婚式」という同じ括りでまとめられるものでも、内容は1つ1つが異なる。当たり前なことなのかもしれない。だが、その当然たることを人が目の当たりにしたとき、幸福という空気、水、いやジェル状の何か、恰も臨界点に達した世界の中に押し込められる。

 

新郎新婦にとってその瞬間は一生に1度だけである。その瞬間に、2人の人生の中で多くの文脈を共有してきた人々が集う。人生における幸福の象徴ではないか。そこで働き、その時を共有させて頂くことができるわたくしでさえ、これほどの幸せを頂けるのだから、当事者たちにとってはどれほどのものであろうか。わたくしの涙が頬を伝ったとしてもしょうがないというものだろう。COVID19の予防のためにマスクをつけていたのはそれが明るみに出ないための僥倖でありましょう。

 

さて、わたくしは今日から結婚式場で働き始めた。すなわち本日が初勤務であったわけである。想像した以上に、ひたすらくるくると料理のお皿を出し入れし、歩き続け、お客様にご案内をした。共に働く人の名を一生懸命覚える。パートナーの山田さん、新人教育の森川さん、今日朝教えてくれた今井さん、歳が近い喜島さん、美人でかっこよく私が憧れる下村さん、専門学校生太田さん   …まだまだたくさんの人がいる。

新人は仕事を増やす存在である。その事を意識しない訳にはいかないのだ。だが、全ての人が通る道であることもまた、真実である。従って、今すべきことは、分からないことを積極的に尋ね、周りをよく観察し、行動して、一刻も早く、正確な仕事ができる、戦力となる従業員になることである。

 

仕事を持つようになって実感したことは、容易い職業などない、ということだ。自分のために勉強してきた今までとは違い、できる仕事のレベルも年齢も何もかもが大きく異なる人々と協力しあって、ひとつのものを作り上げなければならない。新しい出会いがあって、色々な人がいて、その中で仕事をこなさなければならない。わたくしは世の社会人たちとそこに含まれる両親や先生に深い敬意を抱く。

 

医者として働くようになったら、ということを考える。きっと今と同じような段階を通ることになるはずなのだ。すぐには戦力となりえず、他者の足枷になるばかり。たが、その立場を乗り越えてやっと1人前になれる。今、たくさんの経験をしておくべきなのだ。そうして強くなれる。人を見れるようになれる。マネージャーや下村さんは人の指導がうまい。私への指導を的確にし、仕事を与えてくれる。それをわたくしがこなせることによって、できることが増え、自信にもなる。わたくしもいつかそんな教育者になりたいとも思うのだ。

 

*音楽ができたらこんなところで演奏できるなあ。

*花の勉強をして冠婚葬祭に用いられる花の名や特徴を知りたい。

 


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𖠚ᐝ

京大受験旅行記 4日目

2020.02.27.Thu

最終日の朝。目が覚めるのが早い。4:59。疲れているはずなのだが。まだまだ外は暗い。

今日はホテルからおさらばせねばならんので、荷物をまとめます。ホテルのフロントに荷物を預け、朝ごはんを摂ります。

市バスで河原町まで行き、歩いて早朝の京都の町並みを楽しみます。白河通りは、正しく京都の町並みという美しい風景が見られます。
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花見小路に入ると写真撮影が不許可の地区となります。建仁寺に突き当たり、東に真っ直ぐ行くと、東大路通に出てさらに真っ直ぐ行くと、石塀小路の入口が見つかります。人ひとりがギリギリ通れるくらいの、入っていいのかな、と躊躇するくらいの入り口なんです。恰も隠れ道のような、知る人ぞ知るファンタジーが生まれる異世界のような場所であります。しかし、散歩する人もいて、住む人々にとってはありふれた景色なのだなぁ、と思いました。それを抜けると、ねねの道にでます。地図を片手に首をくるくる動かして歩きます。八坂の塔を眺め、安寧坂へ。
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8:30という開店時間前ということもあって、お店は閉まったままで人も少なく静かです。カラスが力強くゴミ袋にかける網を引っ張っています。
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清水坂も人が少ないです。更には清水寺もがらがらです。行く予定はなかったのですが、余りの空き様にお参りすることにしました。3度目となりますが、つまり京都に来る度にきているのですが、何度来てもいいです。
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参道を歩いていると、大粒の霧雨が突然降ったり、そうかと思えば日が差してきます。後に寄ったかんざし屋さんによると、京都の天気は山の天気と同じなのだそうです。音羽の滝では外国人のガイドさんの説明を聞きました。英語が聞き取れるだけで楽しいです。てくてく行くと、お茶屋さんがあります。京都に来たら飲みたいと思っていたお抹茶を頂きました。じっくり味わっていると、うぐいすの声が聞こえます。もう春なのですね。
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茶わん坂をくだりつつ、わたくしの習字の先生へ差し上げる湯呑みを探しました。あるお店の人に相談すると、普段の私ではありえないほどのスピードで決まりました。六瓢という柄の清水焼です。無病をかけ、縁起物だそうなのです。残り1点ということで、お店の人はご縁ですね、と言っていました。とても親密に優しく穏やかに相談に乗ってくれて、わたくしは幸せでした。お店の商品の中には、中にカエルや亀がいるユニークな湯のみもありました。
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それから例のかんざし屋さんに寄り、快活な店員のお姉さんとお話ししました。清水坂を上り、家族の希望通り、開いたばかりのお店で八ツ橋を買います。試食もはむはむと美味しくいただきます。

 

五条坂を下って六波羅蜜寺に向かいます。日本史で有名な空也さん会いに行きます。ほんとうに口から菩薩様が出ているのです。繋いでいるのは針金だそうです。教科書では正面からしか撮られていませんが、ここではガラス越しに多様な角度から眺めることができます。他にも平清盛像などもあって、見応えがあります。室内のテレビでは現代に伝わって行われている踊念仏が放映されており、日本史で学んだことが、ここで初めて実体をもって知ることができました。さほど大きくはない展示会場なのですが、見ていて楽しく、かなりの時間を過ごしました。庭にはわたくしにとって実にタイムリーな無事かえるがいて、ホッコリとし、自分の痛いところを撫でるなで牛もいて、ワクワクします。ここは1人もいいですが、家族や友人と訪れると良い観光スポットだなぁ、と思いました。

ここで知ったことなのですが、京都検定なるものがあるそうです。3級からで、取れば宝物庫を無料で見ることもできるようです。挑戦してみるのもたのしそうだなぁ、思いました。京都についての知識も増えそうですしね。

 

続いて六道珍皇寺に行きます。ここの井戸にはカエルに化けて、皆の相談に乗る矢二郎がおります。このお寺は参拝方法が面白く、覗くのです。閻魔様の像を小窓から覗き、井戸も遠くから覗くのです。鐘も突けるのですが、初めはどうやって突けば良いのか分からなかったです。引くとくゎーん、と鳴りました。満足。
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京都で有名なフルーツサンドを食べに行きます。再び五条坂の信号まで戻って、市川屋珈琲に行きました。趣のある扉を開き、カウンター席に座ります。市川ブレンドコーヒーと季節のフルーツサンドを頼みました。目の前で作っているところが見れて、わたくしは興味深くじっ、と見つめておりました。今回のフルーツは3種の柑橘系の果物が入っていました。お店の人によるとおよそ1ヶ月ごとに果物が変わるそうです。味は、と言いますと、クリームが甘すぎず、柑橘類の甘みが引き立っており、美味しいです。コーヒーは今まで飲んだ中で最もおいしかったです。わたくしの好みでもあったとも言えましょう。甘くて飲みやすかったです。ミルクや砂糖を入れることなくブラックで味わいました。お店の雰囲気もよく、また来たくなるお店でした。
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五条大橋で弁慶と牛若丸を見て、河原町通を通って四条へ。
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最後に1度だけ柳小路の八兵衛さんにお会いします。なむなむ。また次回京都に来た時には必ずお会いしたいです。

 

ホテルで荷物を受け取り、市バスで京都駅に行きます。
f:id:ShiChi:20200303155600j:image(どこにでもいる鳩たち。)
いよいよ京都も最後です。名古屋駅で乗り換えるバスの時間も考えて、新幹線のチケットを買うのに一生懸命で、感慨に浸る間もありませんでした。ですが、新幹線の窓から外を眺めると、京大受験の完全なる終わりが告げられ、京都との別れがじわじわと感じられるようになって、寂しさを覚えるのでありました。

 

ほんとうはもう少し遅く帰る予定でありましたが、COVID19騒動や母の心配もあり、早めの帰宅となりました。名古屋でも上手く乗り継ぐことが出来、無事我が家へ帰還しました。この4日間忘れ物や怪我もなく無事に過ごせて良かったなぁ、と思います。交通機関の利用の仕方やお店での振る舞い方など、意図せずして身についたと思いました。

 

わが愛すべき都市、京都。今回、大学受験という機会を通して、京都に住むことは叶わなかったのですが、逆にそれによって、わたくしの聖地であり続けられるようになったのではないかと思います。住まずに旅として訪れるからこそ、常に新鮮に心を踊らせて訪れることができるのではないかと思うのです。𖠚ᐝ

京大受験旅行記 3日目

2020.02.26.Thu

雲の間から時折太陽の光が神々しくさしいる朝です。地下鉄と京都バスを乗り継いで鞍馬に行きます。地下鉄から降りて地上に出ると白い雲が厚く空を覆い、肌寒く、空気がツンッと澄んでいました。バスのワイパーがゆっくりと雨を拭うのを見て、傘を持ってきてよかった、と小さな幸運を喜びます。

バスを降りると雨は気にならず、傘はささずに歩き出しました。初めに由岐神社に訪れました。
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それから階段を登り続け、どんどん標高が上がります。くねくねと登るので、登った分、谷が見下ろせます。お社や何らかの縁のあるものが点在します。やがて道が二手に別れ、わたくしは木の根道をゆきます。雨で地面が濡れ、霧雨が降り、硬い地盤に潜り込めない木の根が地を這い、恰もジブリの世界観の演出のようであります。木の根を踏まないよう、ぴょこぴょこと歩きます。
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歩くに連れて森が深まり、人の姿もほとんど出ません。これは天狗も潜んで居そうだなと思います。霧雨が降り、薄暗く、木の上から鞍馬天狗がわたくしを見ているのではないか…。

山を下って行くと、石の階段を修理する男の人たちがいます。皆さん、こんにちは、とニコッと挨拶をしてくれました。久しぶりの人との出会いで、それも暖かな人たちでした。京都でも挨拶する文化があるという当たり前なことに気付き、なんだか嬉しく思いました。旅先、特に都会だと挨拶することはためらわれます。

少しぬかるんだ下り道を降り切ると道路に突き当たり、道なりに歩んで貴船神社に向かいます。舗装された道を登ると貴船神社があります。なむなむとお参りをし、さらに登るとたくさんの見所があります。向かう途中で偶然見つけたのがハートの石!偶然だからこそわくわくするものです。
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段々になった川を見遣りつつ、坂を登ると相生のが現れます。ひとつの根から2本の大きな杉が生えているのです。
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あるいは連理の杉というのもあって、杉と楓が和合した、非常に珍しい自然の振る舞いを見ることができました。
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最も奥に着くと、奥宮があって貴船神社の名の由来についても学ぶことができます。ここでもなむなむとお参りをして、今度は来た道をひたすら下って行きます。叡山電車の乗り場までバスを使おうともおもいましたが、車で時間があり、距離も2キロほどだったのでそのまま歩くことにしました。川沿いの木々に囲まれた道をてくてく降ります。ときどき太陽が顔を出します。駅についてしばらく待つと電車が来ます。叡電の席に座った瞬間、想像しなかった弾力が来ました。座席がとてもふわふわだったのです。さらに驚くことには叡電はワンマン電車。京都にもワンマンがあったんだ、と驚きました。終点出町柳駅で降りると暖かな日が指してきました。出町柳商店街に行ってみようと思います。様々なお店が入っており、私はドーナツと40円のコロッケを買いました。それから何軒かの古本屋さんで、好きな作家さんの本探しをしました。

 

そして、ついにわたくしがこの旅行で最も楽しみにしていたものの一つ、進々堂へ向かいます。「黒髪の乙女」と「先輩」が初デートをする今出川通りの進々堂です。
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はやる胸を抑えながら扉を開きます。コーヒーの香りがわたくしを包み込み、黒の長テーブルが静かに置かれています。趣ある室内を興味深くきょろきょろして、席に着きます。進々堂オリジナルサンドとアメリカンコーヒーを注文しました。これがほんとうに美味しいのです。パンは熱くてさくさくもちもち。夢中で食べてしまいます。
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コーヒーを飲みながらゆっくりと過ごしました。周りには京大受験する子を待つ親御さんの姿もチラホラ。この2日間、今は何の教科の時間だなぁ、と考えながら過ごしました。今は数学の時間。もうすぐ16:30。試験終了時刻が近づきます。

やがて受験生が帰り始めます。そのタイミングでわたくしも店を出ます。工学部を受けた同士に会いたいような、会ったら気まずいような心持ちで歩道を歩きました。

 


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森見登美彦さんの小説内では合格祈願すると必ず落ちるという設定の吉田神社に行きます。頂上に行く前に真如堂にお参りをして、それから頂上まで登りました。気軽に登れる高さの山でありますが、少し登るだけで京都が、一望できます。道かも分からないようなところも通りながら、今出川通りの方へ下り、その頃には日も沈みかけていました。この後の予定は特に立てておらず、お腹も空いていないので、とりあえず京大の周りの道をぐねぐねとひたすら歩きます。森見登美彦さんの本で紹介されていた、電気ブランが飲める店に行こう、とはたとおもいつき、そのまま下り、二条大橋で鴨川を渡ります。寺町通から新京極へ。メニューにはちゃっかり電気ブランが!この時、わたくしは電気ブランは作中のお酒なのかと思っていましたが、後に聞いたところによると、古いお酒なのだそうです。のんでみたい!
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商店街から外れてほっそい裏路を通ると、八兵衛さんのところに行き着くことになることに気づき、これは行かずにはおれないでしょう!今日も再びなむなむ。

四条大橋にでます。橋の両側には森見登美彦さんの本に登場する建物が立派に建っております。それぞれ個性を持っており、眺めるだけでも楽しいです。
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そのように橋を行ったり来たりしておりますと、母から電話がきました。しばらく連絡しなかったために確認と早く休むようお達しが下ります。既に20時は回っております。いつもは遊び歩くことはない時間でありますが、京都の町はまだまだ起きています。四条大橋の西側で非常に冷たい夜風に当たりながら、等間隔に続くカップルを眺めます。ようやる、と思います。どこから生まれた文化なのでしょうか。でも、わたくしもやってみたいような気が致します。

やっと帰ることを決意し、四条通りを西側へあるきだしますが、河原町の交差点である若い2人組の男性ユニットの歌に惹き込まれます。まだまだ帰りたくないわたくしは、そこで聞き続けます。目の前で歌っている、旅先で出会った、ということも相まって、上手に歌う姿がさらにきらきらとして、楽しく思えました。かいようせいぶつ、というユニット名で毎日仕事の終わった夕方に、鴨川沿いで歌っているそうなのです。わたくしは古本1冊分の200円をお渡ししました。初めてのことであります。いい歌をありがとう、という気持ちです。
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結局最終の21:30まで聞き、ホテル近くまで行くバスに乗って、部屋に着く頃には22:00になっていました、あてどのない旅というのは感動に溢れているなぁ、と感じます。今までは次は何をするのか常に考えて、急いで行動をし、勉学に励む日常でありましたので、新鮮な幸福感を味わいました。

 

今日はシャワーも浴びずそのまま寝るだけです。最後の夜であります。おやすみなさい。𖠚ᐝ

京大受験旅行記 2日目

2020.02.25.Tue

本日は昨日とは打って変わって曇天なり。

起きてご飯食べて、市バスで京大へ。

未だ決せず。

皆おのおのノートを携えて最後の粘りをみせていました。わたくしも現代文を読んでおります。

受験は可能であるが合格にはならないという予想通りの返事でありました。再考の末、受験しないということを自分で決め、京大を後にしました。なにが正解だったのかわからない。今日受けるべきであったのかもしれない。合格が決まっても勉強し続けるべきだったのかもしれない。初めから目指さなければ良かったのかもしれない。だが、しかし。だがしかし、タイムスリップしたとしてもわたくしは全く同じ道を歩むのだろう。わたくしはいつだって、わたくしが好きな道を、楽しい道を、心躍る道を選びとってきたのです。

正解は今のわたくしがかつてのわたくしを認められるようになって初めて、正解となり得るのでしょう。それはいつだろうか。

 

心のなかがぐるぐるもしゃもしゃで、常のようにわたくしは小説の中へと逃避していきました。

百万遍を通り、満月に立ち寄って阿闍梨餅を買います。
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阿闍梨餅を食べながら、黒髪の乙女とは反対に鴨川デルタへ足を向けます。川に点々とある石をぴょこぴょこ飛び越え、亀に飛び乗ってキャプテンジャックの真似をします。おじさんもぴょこぴょこしております。静かで音のない時間であります。
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狸の家族の様子を見に行きます。

 

河合神社に立ち寄ると甘い芳香が漂ってきました。どうやら、花梨でしょうか。美人になれるよう神武天皇の母君であらせられる玉依姫にお願いします。

 

枝ばかりで閑散とした糺の森をてくてく進み、下鴨神社へお参りします。
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御手洗川の橋を渡りながら、ここで光琳紅白梅図屏風を描いたのかと感動し、水みくじでまた大吉がでます。
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香水や水引のイヤリングも購入し、しっかりお参りもして神社をあとにします。

 

近くの加茂みたらし茶屋でみたらし団子と桜餅をいただきます。こここそがみたらし団子発祥の地なのです。元々はひなのようなもので、人間の身体を表しているそうです。
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加茂川、鴨川沿いの橋を次々にくぐり、マガモの行列を眺め、寺町通の商店街へ行きます。目指すはスマート珈琲店。混んでいるかと思いきや、3番目で入れました。店内にはコーヒーの香りが広がっています。2階に案内され、椅子に腰掛けるとふわっふわ。頼むものは既に決まっています。あつあつのコーヒーとたまごサンドウィッチです。かの後藤係長風に。シンプルなのにすっごいおいしいんです。ボリュームたっぷりで卵はうわうわ。今度は土曜の朝に来たいです。
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続いて京都らしい穏やかな小路を通り、へそ石のある六角堂へ。こじんまりとした境内に鳩や白鳥がいます。
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ここにあるへそ石は平安京遷都の時に六角堂が自ら移動した時に取り残されたものだそう。想像するとなんだか滑稽であります。
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さらに四条通りを渡り、上羽絵惣へ。およそ2年、ずっと欲しかった胡粉ネイルを本場で手に入れに行きます。いろいろな色を試し、水茜とスパーコートを購入しました。初めての自分のネイル。手先がきらきらして上品に振る舞いたくなります。

 

気に入ったネイルをつけたまま、特に当てもなく四条通に戻ります。ジュンク堂を目にして、わたくしは相変わらずさを発動します。吸い込まれるように店内に入り、森見登美彦さんの初版本を探します。お目当てを見つけ、嬉しく思いながら河原町方面へ。かわいいピアスやさんを見つけ寄ってしまいます。PIARIさん。中国出身の気さくなお姉さんが案内してくれました。赤のシンプルなイヤリングを買いました。裏道のラーメン屋さんが美味しいと紹介されて、夕飯はそこに行くことにしました。その前に丸善へ行きます。「檸檬」の聖地巡りもしたかったのですが、ことごとく潰れているのです。丸善では来年度の京都手帳を購入。京都限定絵柄です。これで京都をいつでも学べます。

件のラーメン屋さんはなんだっ亭というカレーつけ麺のお店屋さんで、珍しくて看板をしげしげと眺めたものです。(じつはここ、八兵衛さんの近くの裏道に繋がっていたんです。)中にはカウンター席で、行きつけのお客さんらしき人がいました。注文すると、ぶくぶくと音を立てて沸騰しているカレー味のつゆが出されました。店長さんとお客さんの営業事情を聞きながら無心で食べます。紹介されて来たことをはなし、ごちそうさま、と言ってお店をでます。
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行きたいと思っていた錦通りシャッター商店街になっていました。既に営業時間は終わっていたのです。それでも趣があり、人びとが闊歩するのですから、さすが京都、と言った所でしょうか。
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ホテルにはバスタブがないので銭湯へ行きます。初銭湯です。大宮の錦生湯さん。
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家のお風呂には大きすぎるくらいのお風呂がいくつも並んでいます。下調べでお湯の種類が豊富であることは知っていたので、まずはシンプルそうな所に入ります。深い。膝立ちしてお湯が首まで浸かります。暑くて、隣が水風呂かと思って手を伸ばすと衝撃が走る。冷たすぎたのかと思って、もう一度手を入れる。どうやら温かいらしい。目の悪いわたくしには注意書きが見えなかったのです。電気ぶろ。おばあさんはちょっとごめんなさいねぇ、といってスタスタと入っていきます。わたくしは命の危機を感じているというのに。心を読むかのように死にゃしないよ、と。他にもサウナ、水風呂と薬湯など初めての銭湯に興味津々であります。塩風呂なるものに入れば、まさしく海水に浸った時のように体の傷という傷の位置を教えるのです。なんだか銭湯にもみくちゃにされて、くたくたになって霧雨の降る中、帰途に着きます。恰も戦闘のようであった。と。…

 

たくさんの想いに晒されて、わたくしはプールの中であぷあぷしながら泳ぎ続け、やっとプールサイドに打ち上げられたときの気持ちで、ホテルの人が綺麗にしてくれたベッドに身を投げました。𖠚ᐝ

京大受験旅行記 1日目

2020.02.24.Mon

バスと新幹線を乗り継いで京都へ。

最寄り駅の駅舎が4畳のわたくしにとって、京都駅はあたかも1つの町であります。よくお見かけしますね、とお店やさんに挨拶する数およそ3たび。今ではすっかり顔なじみであります。駅内で過ごすこと半時。

やっと伏見稲荷に行く許可がおりまして、市バスでがたごと揺られます。

 

中学校以来の伏見稲荷大社であります。

既にお昼の時間ですので、門前の日野屋さんで鯖寿し(3巻 700円)、はな屋さんでいなり寿司を購入します。屋台が立ち並び、縁日なのかしらん、日常なのかしらん、と思いながらてくてく進んでいくとお社が現れます。途切れることなく写真を取り続ける人々を横目にお寿司をぱくぱく食べます。おいしいなぁ。お腹もいっぱいになったところで、さァ山登りです。知らない旅行者さんたちとオレンジ色の中へ勢いよく進んでいきます。
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ずんずん進むとおもかる石に到着。願いながら持ち上げるとなんと、予想通りの重さ。意外なことでありました。思うより安く叶うことはなさそうです。驚いたことに一本道ではなく、何度となく脇道に逸れながら歩を進めます。
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そうしてずんずん、ずん、ずん、進む、と、頂上に到着。お参りをしておみくじをひくと2番大大吉。

 われたのむ 人の願いを 照らすとて

 うきよに残る みつのともしび

と。

わたくしはいつも大吉しかでんのです。

そうして今度は軽やかに下って参ります。ころころいくと、あっという間に四ツ辻です。無類のしょうが好きのわたくしは、しょうが入り甘酒(450円)に誘われて一服。家でも試してみようと決意するのです。おかみさんのおおきに〜、を背にまた歩みだします。一気に下ると鳥居がなくなり、人が減ります。稲荷さんの民家に立ち入ると、黒ねこがこちらを見つめています。f:id:ShiChi:20200301195615j:image

帰り道に醤油アイスとぬれ煎餅をいただきます。本当に濡れているんです。七味味について売り子のかわいいお姉さんに尋ねると、先っちょだけつけてくれました。オイチイ。
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市バスで移動、京都駅をすいすい進み、地下鉄で四条堀川にあるホテルにいきます。小粋なお部屋にワクワク。京大へ下見に。

京大の周りをぐるりと回って正面玄関から時計台へ。あたりは地図も読めないほどすっかり暗い。正門に近づき、はっと息を飲む。京都大学のプレートが光を放っている。いや、京大そこ一帯が眩しい。巨大な楠は根元からライトアップされ、時計は魔法の時間を示すように光る。わたくしのカメラはパシャパシャとなりやまない。ずっと見ていられそうです。恍惚とするわたくしを、時は当たり前のように置き去りにしていくのです。
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四条通で市バスをおり、黒髪の乙女のように意気揚々と木戸町に踏み出します。わたくしはそこでまず高瀬川の浅さに驚きます。頼朝公の御恩と対をなすかのような浅さでありました。東へおれて先斗町へ。大人の小さなものがたりの世界のように思われます。橙の光が石畳を照らし、艶やかに優しく往くものを迎えます。
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MIMASUYAさんというイタリア料理屋さんに立ち寄りました。まずは京都食材の生麩、モッツァレラをスモークサーモンも湯葉で巻いた京ロールと紅茶をいただきます。舌触りが滑らかで大切にゆっくり食べたくなります。
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それから、今日のスープであるグラタンオニオンスープ。オニオンスープに大きな麸、その上をグラタン風に仕上げています。
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店内には2人組のお客さんが多く、それぞれに会話を楽しんでいます。お店の方がお皿を下げに来ると料理の感想を述べるのです。感想を言うといいのかも!と新たな学びを得ました。

最後に手作りケーキを頼むと今日はリンゴのタルトでした。美味しかった。
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四条大橋で爪弾く若者たちの音楽を楽しみ、八兵衛明神に会いに行きます。小さな入り組んだ道のりを進んだ先の柳小路で慎重に歩を進めると、彼らが現れます。
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初めて出逢えた喜びと感動と嬉しさと喜びでわたくしはにやけるのを我慢できず、剰え踊ります。わたくしの奇妙な踊りを、過ぎ行くおじ様たちはわたくしと共に踊りたいと、口よりよく言う目をしておりました。ひとしきりわたくし流踊念仏を済ませると、有名にならないうちに四条通りを伝って堀川のホテルに戻ります。
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すっかりお疲れですがシャワーを浴びて寝る支度をします。皆様また明日ご一緒致しましょう。𖠚ᐝ

Introと大学受験

はじめまして。

何故わたくしがそう申し上げるかといいますと、わたくしは今日初めてぶろぐなるものを開設したからであります。勿論多くの人にとっておよそ常に新たな出会いでございましょう。そういう意味でも初めましてと申すのであります。

さて、このぶろぐの趣旨は、といいますと、単にわたくしのつれづれを綴っていくのみにあります。それが現実とは限りません。わたくしのアタマににょきにょきと生えてくる妄想の菌糸たちがぶろぐにも凄まじい影響を及ぼすのではないかとわたくしは憂えておる所存です。あるいはわたくしが人生というものに病み、毛むくじゃらのくろぐろとした子猫になっているときに、文章にすることで心の安定を図ろうとするものであるかもしれません。

わたくしがオモシロイと感じたことでありますので一般論とは対極をなすものであります。「人生は趣味だ!」と仰るわたくしのヨビ校時代の先生に倣うのであります。皆様、重々ご承知頂きたい。

さて、わたくしは山々がお天道様に手を伸ばしてアチイアチイと言っている頃、我が谷を出発し、高速バスで京都に向かっています。わたくしが最も愛する京都への旅は本来幸せでわたくしだけ重力加速度がゼロでバスの中をさまよってしまうはずなのに、わたくしはあのくろぐろとした子猫が愉快に飛び跳ねるといった複雑な心境にあるのです。というのもわたくしは大学の前期試験に向かっているのであります。

しかし、それは皆様が思い浮かべるような、夢に向かって緊張しているといった、うら若き若者の苦悩ではないのです。わたくしは既に推薦で大学入学が決まっているのです。勿論第1志望の。そうして、今向かっている大学もまた第1志望の大学なのであります。何故そのような事態が起こったかといいますと、行きたい学部と行きたい大学が合わなかったからであります。すなわち成績であります。それ故、第1志望学部は推薦を受け、第1志望校は前期を受けたのです。今年1年わたくしは前期を受ける大学合格を目指して勉強してきたのです。

推薦で合格しても前期を受けるつもりではいたのですが、前期の合格は出ないことが分かり、わたくしの大志はみるみるうちに萎んでいきました。それからというもの勉強におさらばとも言わずに疎遠になって、わたくしが愛情を注いできた教材の目の前で、本の世界に浸るという現実逃避をしたり、我が風の谷をころころと駆けずり回ったり、アルバイトを探したりと忙しい日々を送っているのです。

1年学び舎を共にした同士たちはこれから人生の行き先を決めようとしています。そんな時にわたくしはわたくしがのうのうと旅をしていることに耐えられるのだろうか。殊に志望校を共にしていたのは、わたくしとSの2名だけであったのです。彼には受かって欲しい、絶対に。

兎に角、明日、大学へ赴こうと思っています。他の受験生に迷惑なことはしてはいけないと思っています。

留まるところを知らぬCOVID19の猛威に晒されぬよう細心の注意を払わねばならぬ。ここで受験生が一度に動く。保健師でありわたくしをこよなく愛する我が母は、日本中の母たちがするのと同様に、アルコールを持たせ、我が耳にタコができてゆくゆくはタコになるほど予防を喚起する。

皆様もお気を付けあれ。 𖠚ᐝ