京大受験旅行記 3日目

2020.02.26.Thu

雲の間から時折太陽の光が神々しくさしいる朝です。地下鉄と京都バスを乗り継いで鞍馬に行きます。地下鉄から降りて地上に出ると白い雲が厚く空を覆い、肌寒く、空気がツンッと澄んでいました。バスのワイパーがゆっくりと雨を拭うのを見て、傘を持ってきてよかった、と小さな幸運を喜びます。

バスを降りると雨は気にならず、傘はささずに歩き出しました。初めに由岐神社に訪れました。
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それから階段を登り続け、どんどん標高が上がります。くねくねと登るので、登った分、谷が見下ろせます。お社や何らかの縁のあるものが点在します。やがて道が二手に別れ、わたくしは木の根道をゆきます。雨で地面が濡れ、霧雨が降り、硬い地盤に潜り込めない木の根が地を這い、恰もジブリの世界観の演出のようであります。木の根を踏まないよう、ぴょこぴょこと歩きます。
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歩くに連れて森が深まり、人の姿もほとんど出ません。これは天狗も潜んで居そうだなと思います。霧雨が降り、薄暗く、木の上から鞍馬天狗がわたくしを見ているのではないか…。

山を下って行くと、石の階段を修理する男の人たちがいます。皆さん、こんにちは、とニコッと挨拶をしてくれました。久しぶりの人との出会いで、それも暖かな人たちでした。京都でも挨拶する文化があるという当たり前なことに気付き、なんだか嬉しく思いました。旅先、特に都会だと挨拶することはためらわれます。

少しぬかるんだ下り道を降り切ると道路に突き当たり、道なりに歩んで貴船神社に向かいます。舗装された道を登ると貴船神社があります。なむなむとお参りをし、さらに登るとたくさんの見所があります。向かう途中で偶然見つけたのがハートの石!偶然だからこそわくわくするものです。
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段々になった川を見遣りつつ、坂を登ると相生のが現れます。ひとつの根から2本の大きな杉が生えているのです。
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あるいは連理の杉というのもあって、杉と楓が和合した、非常に珍しい自然の振る舞いを見ることができました。
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最も奥に着くと、奥宮があって貴船神社の名の由来についても学ぶことができます。ここでもなむなむとお参りをして、今度は来た道をひたすら下って行きます。叡山電車の乗り場までバスを使おうともおもいましたが、車で時間があり、距離も2キロほどだったのでそのまま歩くことにしました。川沿いの木々に囲まれた道をてくてく降ります。ときどき太陽が顔を出します。駅についてしばらく待つと電車が来ます。叡電の席に座った瞬間、想像しなかった弾力が来ました。座席がとてもふわふわだったのです。さらに驚くことには叡電はワンマン電車。京都にもワンマンがあったんだ、と驚きました。終点出町柳駅で降りると暖かな日が指してきました。出町柳商店街に行ってみようと思います。様々なお店が入っており、私はドーナツと40円のコロッケを買いました。それから何軒かの古本屋さんで、好きな作家さんの本探しをしました。

 

そして、ついにわたくしがこの旅行で最も楽しみにしていたものの一つ、進々堂へ向かいます。「黒髪の乙女」と「先輩」が初デートをする今出川通りの進々堂です。
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はやる胸を抑えながら扉を開きます。コーヒーの香りがわたくしを包み込み、黒の長テーブルが静かに置かれています。趣ある室内を興味深くきょろきょろして、席に着きます。進々堂オリジナルサンドとアメリカンコーヒーを注文しました。これがほんとうに美味しいのです。パンは熱くてさくさくもちもち。夢中で食べてしまいます。
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コーヒーを飲みながらゆっくりと過ごしました。周りには京大受験する子を待つ親御さんの姿もチラホラ。この2日間、今は何の教科の時間だなぁ、と考えながら過ごしました。今は数学の時間。もうすぐ16:30。試験終了時刻が近づきます。

やがて受験生が帰り始めます。そのタイミングでわたくしも店を出ます。工学部を受けた同士に会いたいような、会ったら気まずいような心持ちで歩道を歩きました。

 


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森見登美彦さんの小説内では合格祈願すると必ず落ちるという設定の吉田神社に行きます。頂上に行く前に真如堂にお参りをして、それから頂上まで登りました。気軽に登れる高さの山でありますが、少し登るだけで京都が、一望できます。道かも分からないようなところも通りながら、今出川通りの方へ下り、その頃には日も沈みかけていました。この後の予定は特に立てておらず、お腹も空いていないので、とりあえず京大の周りの道をぐねぐねとひたすら歩きます。森見登美彦さんの本で紹介されていた、電気ブランが飲める店に行こう、とはたとおもいつき、そのまま下り、二条大橋で鴨川を渡ります。寺町通から新京極へ。メニューにはちゃっかり電気ブランが!この時、わたくしは電気ブランは作中のお酒なのかと思っていましたが、後に聞いたところによると、古いお酒なのだそうです。のんでみたい!
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商店街から外れてほっそい裏路を通ると、八兵衛さんのところに行き着くことになることに気づき、これは行かずにはおれないでしょう!今日も再びなむなむ。

四条大橋にでます。橋の両側には森見登美彦さんの本に登場する建物が立派に建っております。それぞれ個性を持っており、眺めるだけでも楽しいです。
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そのように橋を行ったり来たりしておりますと、母から電話がきました。しばらく連絡しなかったために確認と早く休むようお達しが下ります。既に20時は回っております。いつもは遊び歩くことはない時間でありますが、京都の町はまだまだ起きています。四条大橋の西側で非常に冷たい夜風に当たりながら、等間隔に続くカップルを眺めます。ようやる、と思います。どこから生まれた文化なのでしょうか。でも、わたくしもやってみたいような気が致します。

やっと帰ることを決意し、四条通りを西側へあるきだしますが、河原町の交差点である若い2人組の男性ユニットの歌に惹き込まれます。まだまだ帰りたくないわたくしは、そこで聞き続けます。目の前で歌っている、旅先で出会った、ということも相まって、上手に歌う姿がさらにきらきらとして、楽しく思えました。かいようせいぶつ、というユニット名で毎日仕事の終わった夕方に、鴨川沿いで歌っているそうなのです。わたくしは古本1冊分の200円をお渡ししました。初めてのことであります。いい歌をありがとう、という気持ちです。
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結局最終の21:30まで聞き、ホテル近くまで行くバスに乗って、部屋に着く頃には22:00になっていました、あてどのない旅というのは感動に溢れているなぁ、と感じます。今までは次は何をするのか常に考えて、急いで行動をし、勉学に励む日常でありましたので、新鮮な幸福感を味わいました。

 

今日はシャワーも浴びずそのまま寝るだけです。最後の夜であります。おやすみなさい。𖠚ᐝ